短編小説書いてみた【君に野球を ホームベースには爆弾を】

私、春田文男は2018年4月にスポーツ新聞社を退職した。

40歳にして大きな決断だった。

私も昔はプロを目指して野球をやっていた。しかし、どうしてもチャンスで打てず大学卒業と同時に野球を諦めることを決めた。そのとき以来の大きな決断だった。

 

なんとかスポーツ新聞の記者になり野球に関わる仕事を手にしたのだが、二年前に副業が当たってしまい野球選手と同様の所得と、数年後に一億円相当の遺産を貰える見込みが出来たので辞めてしまった。

今では午後に起きてトマト栽培、夜になったらTVで野球観戦。そんな生活を高知で送っている。将来的には海外移住を考えているので、物こそ多くないが優雅な生活を送っている。俗にいうミニマリストってやつだ。

 

今日は開幕戦、まだ肌寒い。捕手(キャッチャー)が咳をしているのがよく注意してみるとわかる。

こんなに寒いのに外で働かなくてはいけないなんて大変だなと彼らに同情せざるを得ない。

 

さて、だいぶもったいつけてしまったが、私がどのようにして平日18時から野球を見られる生活を手にしたか話そうか。

 

今は、ワンアイデア有れば起業できる時代。時代の流れをよみ、適切なタイミングで欲しいものを提供する。それが何より大切だ。

 

私にとっての転機は「コリジョンルール」の制定だった。

コリジョンルールをご存知ない方向けに簡単に説明すると、捕手(キャッチャー)に対するタックルを禁止するルールである。ホームでの激しい接触を禁止することで捕手の怪我を防止しようという狙いで設けられた。

これにより生じた変化が二つ。

一つ目は、捕手の怪我の可能性が減ったことだ。正捕手はレギュラーから落ちない、二番手に一度落ちると元に戻れない状況が出来上がった。

もう一つは、ブロックという守りに必要な能力が不要になったことで相対的に打撃能力が求められるようになったことだ。特にピッチャーが打線に加わるセ・リーグは打撃でレギュラーを選ぶ傾向が顕著になった。

 

その二点に目をつけた私はセ・リーグ6球団のレギュラー捕手を集めた。そして、どの投手も持っている球種、ストレートを投げるときのサインを共有した。新聞記者のコネを存分に活かしたわけだ。

 

テレビに映っている捕手は忠実に、ストレートを要求する前に咳をしている。簡単だ。咳が聴こえたらストレートを打つ。それだけだ。

 

サイン盗みは普通は捕手から投手への球種の伝達後に第三者の敵の手で行われる。

まさか、自陣のキャッチャーがそんなことをするとは思わないだろう。正に斜め上からの攻撃である。

 

 

今は2018年、三年目になるが今年も上手くいきそうだ。私は事前に約束した通り全員から毎年所得の6分の1を受け取って悠々自適な生活を送っている。

収入の6分の1なんて、保険に入っていると考えれば安いもんだろう。

みんな罪悪感は感じるだろうが、自分のヒットでチームが勝つこともあるのでチャラだと思うことで心の折り合いをつけているんだろう。みんな大人なのだ。

 

谷○、阿○などの高齢捕手が引退したり捕手を辞めて、全チーム若手捕手に切り替わったのも本当に幸運だった。

ようやく神から与えられたチャンスを存分に活かすことができた、大学時代に打てなかったヒットを打つことができたのだ。

 

基本楽観主義な私だってこのシステムが永久に続くとは思っていない。多分現在30歳の捕手が引退するタイミングでこのシステムは終わりを告げるだろう。

このタイミングでこの情報をリークして大金を稼ごうというプランが私がホームベースに埋めた爆弾なのだ。

 

選手たちはその時には海外に移住してしまっている春田文男を恨むと同時に、罪悪感から解放されてこう思うだろう。

ありがとう、春田文男!ありがとう、スプリングセンテンス!と。

 

終わり

 

あとがき

 

くぅ~疲れました。書くって決めてから三時間くらいですね。野球わからん人が見たらどう感じるかわからないんですが、お楽しみいただければこれ幸い。

 

なんというか、リアリティーある感じに、なっちゃいましたが当然の如くフィクションです。

 

 

SSK ゴムホームベース YH5

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