青春の一冊 ぼくは勉強ができない (新潮文庫) | 山田 詠美

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ぼくは勉強ができない (新潮文庫) | 山田 詠美 

 

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あらすじ(新潮社の宣伝文句から)

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ――。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪い。この窮屈さはいったい何なんだ! 凛々しくてクールな秀美くんが時には悩みつつ活躍する高校生小説。

 

僕が中学生の時には教室の後ろの棚に新潮文庫の本が100冊くらいズラッと置いてあった。

生徒は皆その中からひとつを取り、毎朝10分、読書の時間という名目で読むことを強要される。

強要と感じたのは僕が読書が嫌いだったからじゃない。その時の担任が嫌いだったから。本来僕は読書が大好きだ。

 

僕はたくさんある本の中から「ぼくは勉強ができない」を手に取った。タイトルが気が利いてるなと思って手に取った本だったが、これが効を奏す。

 

上記のあらすじの中にもある、「ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中」この部分が最初の10分で読んだ範囲で描写されていた。

あらすじも何も知らず読み始めたのだが、まさか読み始めて10分たたないうちに主人公が10歳は年上であろう女性とベットインすると思ってなかったので面食らった。

 

要するに心の準備ができていなかったのだ。

 

セックスについて描写された小説を初めて読んで、おいおい最高じゃねーかよ!というのが最初の10分の感想。

結局手に取った初日に全部読みきってしまった。

 

最初は学校側がこの本を用意したという事実が面白く感じられたが、読んでるうちに考えが変わって行った。

ぼくは勉強ができない、この教室に置いてある本の中で一番教育にいい本なんじゃないか!?と思うようになった。

この本を一言で言うと、「時田秀美君の成長物語」なのだが、彼は善悪や必要不必要をちゃんと自分で考えているからとてもかっこいい。

表題の「ぼくは勉強ができない」に関しても、自分で判断して「ぼくには勉強は必要ない→ぼくは勉強ができない」となっているのだ。

作中には頻繁に反りが合わない教師に反発する場面はあるのだが、それは彼の善悪と噛み合わないからでなく、教師側から価値観を押し付けられる場面で起きている。

母親しかいない秀美が教師に「片親がかわいそう」と言われ反発するシーンはまさにその象徴だと思う。

 

多分、中学2年生と言うのはこの本を読むのに最も適したタイミングだったと思う。

学校の教師の言葉に違和感を感じ、性に興味を持ち、まだ知らぬ高校生活に思いを馳せる、そんなタイミングだったので、本当にラッキーだった。

正直「ぼくは勉強ができない」より好きな本はある。山田詠美さんの本だけで考えても、「風葬の教室」や「蝶々の纏足」の方が好きだ。

ただ、青春の一冊というお題が出されたらこの本を選ばざるを得ないのでこの本を選びました。オススメですよ。けっこう過激なエロ本だと言われる山田詠美の本の中では比較的ライトですし。

 

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

 

 

蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)